夜明けが早くなってきました。
これまで朝5時台前半に家を出ると、夜中のような感覚で
すれ違うのも新聞配達の人くらいでしたが、今は走っている人も増えています。
夕焼けよりも白い、朝焼けの光に包まれた街を歩く自分の足取りは、しかし重いのです。
日曜日以外の休日の時、いつも私がやっている仕事を代わりにやるのはS木さん。
これはT中さんやY崎さんが休みの時も同じで、それぞれがちゃんと掃除しているか
S木さんのチェックが入るのです。
一週間の中でも、とくに念入りに掃除するように言われている曜日があります。
婦長さんがチェックするのが水曜日。
チェックはされないけれど、偉い先生が回診するから失敗できないのが木曜日。
そしてS木さんのチェックが入るのが、私の場合は火曜日なのです。
病室の中でも手が行き届きにくい場所というのがあって
各部屋のヒーターは、ベッドと壁との間が30㎝くらいしかありません。
横に患者さんの荷物が置かれていることもあり、隙間に入り込まなければならないので
限られた時間の中では、毎日拭くのが難しい状況です。
課長さんからも
「毎日はやらなくていいけど、週に1回は最低でもやって欲しい」
と言われています。
目立たない場所なので、ここをチェックするとしたらS木さんだけ。
だから休みの前日に掃除をするようにしていました。
しかし昨日、自分の受け持ちの病室を半分くらい終わらせたところで、携帯が鳴りました。
1人部屋が2階と3階合わせて3部屋が一気に空くことになり、しかもどの部屋も
午後イチで入る人が決まっているので、最優先で掃除をしなければならないとのこと。
それで3階の一部屋の清掃を、急遽私が受け持つことになったのです。
1人部屋の掃除はとくに難しくは無いのですが、シャワー室全体を洗い流し
排水口の部品を取り外して綺麗にしなければならないので、時間がかかります。
終わった頃には普段より20分近く時間が押していました。
(残りの病室は手早くやらないと…)
そんな考えで一杯になり、すっかりヒーターの掃除を忘れてしまったのです。
思い出したのは、夜になってから。
すっかりくつろぎ、缶チューハイのプルタブを立てた瞬間です。
直前まで、翌日が休みという気安さに包まれて、のんびりしていたのが
プシュッという音と共に、一気に緊張します。
それと同時に、手に埃の付いた雑巾を持ったS木さんが、眉間に皺を刻みながら
「ヒーターやってなかったでしょ」
とやって来る様がありありと浮かび、せっかくの休日が
注意を受けるまでの待機時間になってしまったのを感じて
思いっきりテンションが下がってしまったのでした。