出勤時に乾いていた地面が、帰る頃には真っ白。
手袋の無い指先が痺れます。
最高気温でも-3℃、深夜、これからもっと冷え込むはず。
本物の冬の到来に、ギリギリまで履いていたスニーカーを
シューズロッカーに片付けました。
昨日、仕事の後片付けの際、新人のO野さんと久しぶりに鉢合わせしたのです。
先日同じ場所で会った時には、私が別の階の洗い場に行ったけれど
この間、T中さんが流し台うの横の洗濯パンで、道具を洗っていたのを思い出し
私も洗濯パンを使うことにしました。
新人さんとは受け持ちのエリアが離れているため、勤務中にすれ違うことも滅多に無く
少し話をしてみたいと思ったのです。
「仕事、慣れました?」
と声を掛けてみると
「うーーーーーーーーーん、まだまだですね。
なかなか思うように早くできないです」
と、O野さん。
もう仕事の内容を覚える段階を終えて、早さを気にしているようで
S木さんが
「新人ちゃんは覚えが早くて助かるわあ」
と言っていたのを思い出しました。
「私、○○丁目なんですけど、O野さんも家が近いって言ってましたよね?」
と尋ねると
「あっ、私○×丁目です。
やっぱり近いのはいいですよね」
その後も話していると好感触で
(もしかしたら、この人はこのまま職場に居ついてくれるのでは…)
と、内心期待しました。
今は課長さんが腰痛で、仕事に来たり来なかったりしているので
本来5人体制の職場を4人半でやっているような状態。
4人は本来の作業量よりも多く働いているのです。
O野さんが仕事を長く続けられるようなら、課長さんがもっと楽な職場に異動して
もう1人新しい人を採用すると、皆が本来の作業量に戻れる予定なのでした。
そんな風に勝手に期待で胸を膨らませていると、O野さんが、ふと
「でも…最近、古傷が痛くなってきて」
と言い出しました。
え…古傷…?
何だか悪い予感しかさせない単語です。
「昔、股関節を亜脱臼して、この病院に入院してたんです。
それからあんまり激しい運動をして来なかったんで…
面接の時にもそれは言ったんですけど」
と聞いて、いろいろな意味でビックリしました。
えっ!? 股関節!?
えっ!? この病院!?
えっ!? 面接でちゃんと言ってて、それでも採用!?
その頃にはO野さんは道具を洗い終えていて
「じゃあお疲れ様です」
と、その場を去っていきました。
私は意外な話に理解が追い付かず、なんとも複雑な気持ちで
備え付けてある雑巾で洗濯パンを拭いたのでした。