仕事を終え、休憩室に戻ると、S木さんが守衛さん用の椅子に脚を組んで座り
紙コップのコーヒーを飲みながら、休んでいる最中でした。
「あっ、くるさんねえ、言ってなかったけど、ボーナス出るからね。
うちの会社入ってギリギリ半年経つでしょ?
うちは半年経つとボーナス出るから」
そういえば、マンションの清掃をしていた分も入れれば、半年が経ちます。
でも自分にはボーナスだの何だのは、縁がないものだと思って
意識の中からすっかり飛んでいました。
「ほんのちょっとだけどね、15日に振り込みあるからさ。
何年もいれば少しずつ上がっていくからね」
と、「上がっていくからね」の部分を強調するS木さんから
ボーナスの明細が入った封筒を受け取りました。
毎日疲れ切って(仕事を辞めたい)と思わない日はないけれど
ボーナスの話を聞いて、沈んだ気持ちが僅かながら浮上した気がします。
さすがにその場で封を切って明細を見るのはちょっと…と思い
バッグに封筒を入れると、S木さんは
「やっぱ、あれっしょ。
会社に言って、若くて家が近い人に来てもらうように言って正解だったさ。
求人募集だと来る人来る人、60代後半とかばっかで…
うちの仕事はちょっと無理っしょ」
それって…私の配置転換のことでしょうか。
ええー…
あれはどうやらS木さんの鶴の一声で決まっていたようです。
前々からS木さんは社内での発言権が強いと感じていましたが…
条件がたまたま合ってしまったのが、私の運の無さでしょうか。
ちなみに家に帰って明細を見ると、ボーナスは5,000円。
雇用保険料と所得税が引かれて、手取り4,782円でした。