「あの袋に大事なものが」

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土曜日は病院清掃のパートの日。

手術後の猫が服を脱いでいないか、心配しつつの出勤でしたが

なんとか今日は脱衣を免れました。

 

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病院では病室のゴミを集めるのも仕事のひとつ。

 

可燃ゴミ用の袋とペットボトル用の袋を手に、各部屋を回っていたところ

ある部屋の、60代後半と見られる女性の患者さんが

「これ、このまま投げてくれる?」

と、どこかのお店のペーパーバッグを渡してきました。

 

『投げる』はこちらの方言で、『捨てる』という意味です。

 

厚みや重さ的に、分別すべきペットボトルや缶は入ってなさそうだったので

そのままその紙袋を受け取り、持っていた燃えるゴミ用の袋へ。

 

受け持ちの全部屋のゴミを回収し、ゴミ置き場に置いて

さて次の作業に移ろう…と受け持ちの階に戻ったところで

件の患者さんが血相を変え、こちらに向かってきました。

 

「さっきの袋、捨てちゃった!?

あれに薬を入れたままだったの。

1個5千円する高い薬だって聞いて、ビックリしちゃって…

瓶に入ってるやつなの」

 

…いや、それは、こっちがビックリです。

普段、ゴミ箱に入った状態のゴミだと、目で見て捨てていいか分からないものは

持ち主に確認しているのです。

 

でも今回は本人から直接手渡しされたので、てっきり分別済だと思い

中身をあらためませんでした。

 

しかし集めたごみの袋はどれか、分かっています。

土曜日で業者の収集もありません。

 

大急ぎでゴミの集積場に行き、最後に置いた袋を開けました。

大量のゴミを引っ掻き回して、底の方に紙袋を見つけ、取り出すと…

 

中には紙のゴミしか入っていません。

間違いなくこの袋です。

 

念のためにその袋を持って、薬を失くしたという患者さんのところに行くと

袋に入っていなかった旨を伝えました。

 

「えーっ!?

確かにこの袋に入れたのに…」

 

隣のベッドの患者さんが

「私がよく効くから、一緒に通販で買ってあげたの。

これと同じやつ」

と、テレビ台の引き出しを開け、黒いパッケージに『DNA』と書かれた

小瓶を取り出しました。

 

てっきり病院の薬だと思っていたので(もしかして見落としがあったかも)と

冷や冷やしていたところ、薬を失くした患者さんの方が

「あれ?」

と言いました。

 

その患者さんのテーブルに、ペットボトルやヤクルトの瓶、箸などに混ざって

黒い小瓶が載っていたからです。

 

「ああ、あったあった。

ごめんねえ、気付かなかった」

 

そう謝罪する患者さんに

「いえ、いいですよ、あってよかったです」

と返しました。

 

職業上患者さんにはいろいろ思うところはあっても、それを顔色や言葉に

出すわけにはいきません。

サービス業の業(ごう)のようなものです。

 

それよりこの件で、予定が20分以上押しています。

ダッシュで持ち場に戻り、大急ぎで掃除をして、すっかりクタクタになって帰宅しました。

 

仕事を辞めるわけにはいかないし、辞めないけれど、辞めたくなる瞬間は

そこここに、いくらでも転がっているのです。

 

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最後まで読んで下さって、ありがとうございました

 

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