うちの猫が悪性腫瘍にかかっているのを、清掃のパートさん3人は知っています。
以前、S木さんに「猫にもしものことがあったら、有休を取らせて欲しい」と
話したことがあったからです。
S木さんには火曜日に動物病院に行ったことも、話してありました。
今日の仕事上がりに休憩室でS木さんと2人きりになりました。
「くるさん、猫ちゃん、病院でどうだった?」
と尋ねられ、気管が狭くなっていたことと、腫瘍が2か所に転移していたことを話すと
S木さんは腕を組みながら
「やっぱ動物もね、長いこと一緒にいると情が湧くけど、まあ別れは来るよね」
と言いました。
そしてそのまま
「今まで犬を8匹飼ったけど、皆もう死んじゃってね」
「すごい苦しんで病院で亡くなった子がいた」
「一番可愛がってた犬の時は、ショックで焼き場に付いて行けなくて、普通に出勤したさ」
「保健所にお願いしたら、焼いた後の骨を他の動物と混ぜて一か所に投げてた」
「◯◯の焼き場に連れて行ったら、人間みたいにお骨を取り上げて壺に入れてくれた」
「骨をペンダントにしてくれるところもある」
という感じで、延々とペットが死んだ時の話を続けるのです。
正直、すぐにでも家に帰りたくて仕方がありませんでした。
私もいずれはそういう話から目を背ける訳にはいかなくなるでしょう。
でもまだ早過ぎる…
気管を拡げる薬を飲ませてからは、咳の発作は止まっていて
見た目は健康な猫と変わらず、クッションの上で丸くなったり伸びたりしているのです。
今はまだ、焼き場がどうとか、お骨がどうとか、そんな言葉を耳に入れたくありません。
こんなことに費やす時間があったら、すぐにでも家に戻りたい…
親切心で言ってくれているのが分かっているだけに反論もできず
頷きながら黙って話を聞いていましたが…
聞いた言葉を頭の中で触らないようにして、そっと意識の外に捨てていく。
そんな一時(ひととき)でした。