昨日は少し暑くなりました。
どちらかといえば、温度が上がったというよりも、湿度の高さが影響している様子。
雨は降らなかったけれど…
頭上にあるのは灰色の空です。
仕事を終え、地下鉄の駅に向かう途中のこと。
歩道に植えられた街路樹の上でカラスが1羽、異様に鳴いています。
バサバサと樹上と歩道を行き来して、近付くと襲われるのではないかと思うような
恐怖感がありました。
反対側の歩道に渡ろうにも横断歩道が近くになく、その木の横を通り過ぎるしかありません。
前の方を歩いている女性がカラスに威嚇されて、小走りに通り抜けています。
私もカラスを刺激しないよう、できるだけ避けるように歩道の端の方を歩いていると
木の真横を過ぎたあたりで、歩道に何かふわふわした黒っぽいものが落ちているのに
気が付きました。
カラスの雛です。
何らかのアクシデントで巣から落ちてしまったのでしょう。
成鳥の6割くらいの大きさで、かなり育っているけれど翼は小さく
見たところ、もう生きている様子ではありませんでした。
雛の様子をうかがっているのを気取られたのか、親鳥がひときわ大きな声で騒いだので
急いでその場を離れましたが…
派遣社員だった頃、休憩時間に窓から見えるのは、中心街のビルと、空と、カラス。
空を背景に羽ばたいているのを見て、その自由さがとても羨ましいと思っていました。
でもその両肩に付いているのが翼なばっかりに、何かあった時に我が子を
抱き上げることも叶わない。
そういう生き物なのだと思うと、何とも言えない哀れさを感じます。
その場から徐々に遠ざかっても、通行人に威嚇する声は、時折り響いていました。
複雑な気分を背負いつつも、何をするわけでもなく、そのまま駅へ。
地下鉄のシートに座りながら、落とした視線の先にある自分の手を
じっと見ながら帰宅しました。