うるさかった猫も、普段私が出勤する時間になると、自分の寝床に行って眠りにつきました。
すっかり寝入った辺りで、強引に抱き上げてペットキャリーに入れ、動物病院へ。
外は雨上がり。
空気が冷えています。
順番が回ってきて、診察室で先生が猫の横腹に聴診器を当てると
それまで鳴きもせず微動だにしなかった猫がシャーシャー怒り出しました。
「ごめん、ごめんね」
と言いながら、そのまま猫を先生に引き渡し、待合室に戻って待っていると
受付のお姉さんが
「今日はもう帰っていいですよ」
とのこと。
明日の正午に引き取りに行けばいいそうです。
人間だったら手術の間待っているのに、動物だとこういうものなのか…
終わるまで待っているつもりだったので、なんだか腑に落ちないような
中途半端な気持ちを抱えて、家に戻りました。
帰宅すると、まだ昼前。
わざわざ仕事を休んで作った時間が、そのまま手付かずで残りました。
猫がいなくなったら、時間が余って余って仕方がないのでは…と思っていましたが
実際に一人で過ごしていると、一日はあっという間。
大して何もしていない、何も感じていない、手元に何も残らない、空っぽの時間。
それなのに恐ろしいスピードで通り過ぎていきます。
愕然としました。
将来、本当に一人になったら、こんな生活が待っているのでしょうか。
背筋を寒いものが走ります。
これが、孤独…
若い頃の孤独にはまだ夢や希望が寄り添っていたけれど
50代後半の孤独は、そうか、こういうものなのか…
上手く言葉にできない、ほの暗いものが胸に広がっていくのを感じました。