男子トイレの個室を清掃中、コンコンとノックをされ、患者さんかと思って
ちょっと焦りながらドアを開けると、S木さんでした。
「くるさんさあ、コロナのワクチンの日決まったから、言っとこうと思ってさ」
1回目が8月2日で、2回目が8月23日…ですか。
1回目でも、まだ4週間先です。
「7月の方はね、T中さんが希望したから…
ほら、あの人は夕方から掛け持ちしてるでしょ?
都合が付きにくいんだわ」
T中さんの方が歳上だし、普通に順番を待ったら彼女の方が先に
チケットが送られてくる立場なので、何とも思わないのですが
S木さんは幾分申し訳なさそうに説明しました。
とにかく人手の足りない職場なので、接種を受けるにしても一人一人
日にちをずらさなければなりません。
同時に何人もワクチンを接種して、全員に副反応が出たら
仕事が回っていかないのです。
既に70代後半の守衛さんが2人、ワクチンを打っていますが
前から居るガタイのいい守衛さんには、とくに影響が出なかったものの
新しい守衛さんは、微熱と全身に虚脱感が現れて、2日ほど寝込んでいます。
そのため清掃班の課長さんとS木さんが、警備の仕事の研修を受ける羽目に
なっているのです。
仕事が一通り終わって道具を洗いに行くと、Y崎さんがモップを洗っていました。
「あれさ、コロナのやつ、受けるの?」
来月に打つ日が決まったのを伝えると、Y崎さんは
「あれ、仕事が終わった午後に打つって聞いて断った。
仕事の後に、ここ残るの面倒臭いと思って」
Y崎さんはまだ若いので、そこまでしてワクチンを打つ気には
なれないのかもしれません。
個人的にはせっかくの機会が勿体ないような気もしましたが、100%安全とは
言い切れないものだけに、「そっかー」とだけ答えました。
あと4週間。
多少の不安にソワソワしつつ、それまで感染したりしないように
うがいと手洗いを励行したいと思っています。