巷はすっかり春の雰囲気です。
ついこの間まで雪が残っていたのが嘘のよう。
雪解け水のぬかるみもすっかり干上がり、乾いた平らな道路を見ると
(もう少し歩いてもいいかな)という気持ちが湧き起こります。
火曜日、私がいつも掃除しているエリアをS木さんがチェックしたはずなのですが
なかなか顔を合わせる機会がありませんでした。
(今週はこのまま終わるのかな…?)
などと思い、ちょっと安心していたら、今日になって道具置き場で
S木さんに遭遇しました。
「あ~、久し振り~」
と声を掛けられて
「久し振りです」
と笑顔で返したものの、内心では掃除のし忘れで注意されるかもしれないと
ビクビクしていたのですが…
とくにその件では何も言われることはありませんでした。
ただ、S木さん曰く
「キミは音を立てないせいか、本当に掃除中に見つからないね。
他の2人は大体行けば結構目立ってるし、いるのがすぐ分かるんだけど
3階に来て、いるかな?と歩きながら探しても、どこにもいなくて
諦めたこともあったんだよね~」
とのこと。
それは多分、私が掃除する場所が、廊下や広い洗面所など人が行き交う場所ではなく
トイレや病室など、一旦入ると人目に付かない場所ばかりだからです。
病室だとベッドの下をクロスで拭くために、かがんだりして
ベッドの陰に隠れてしまうことも多いですし…
それを言うと、S木さんは
「そんなもんかな~」
と言いながら奥にあるバケツを取ると、足速に立ち去っていきました。
注意喚起されることなく、ホッとしましたが…ふと気付いたのは
S木さんがたまに私のことを「キミ」と呼ぶこと。
とくに嫌でも何でもないのですが、女性同士だとあまり相手を
「君(キミ)」と呼ぶことは多くないので
違和感というか、一瞬(あれ?)という感じたのです。
おそらくS木さんにとって私との関係は、職場の“先輩と後輩”というよりも
“上司と部下”という感覚なのでしょう。
契約社員と半日のパートという立場の差もあると思いますが
そう考えるとしっくり来ます。
思い返せば、私が会社の辞令で、勤務先がマンションから病院に異動して
研修で物覚えの悪さが露呈したのに、そのまま病院での勤務が継続になったのは
S木さんの意見が通ったからだと、課長さんから聞いたことがありました。
彼女にとって、私は『育てる対象』だと思われている気がします。
この職場では50代でも若手ですし。
しかし関節痛も筋肉痛も日に日に蓄積しているというのに
ますますこの職場を辞め辛い理由が増えてしまって
肩の荷が一段と重くなったように感じるのでした。