職場を去る日

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マンションの掃除をするのも、今日限り。

転校を控えた生徒のような気分で、毎日カウントダウンするのも最後です。

自分で選んだ職場のはずなのに、いつの間にか選択肢が消えていました。

 

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最後の仕事と言っても、とくに何があるということも無く、いつもと同じように

持ち場を掃除して終わりました。

むしろ目立ったトラブルなどが無く、つつがなく終われて良かったです。

 

最後の階の掃除を終え、道具を片付けて休憩室に向かう途中で

管理人のK山さんが声を掛けてくれました。

 

「お疲れさん。

短い間だったけどご苦労様でした」

 

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

そう返して、ロッカールームに行き、中にある私物を自分のバッグに詰め込みながら

(確かに短い間だったなあ…)と半年という時間を噛み締めました。

 

10年前、ここに努めた時は1年で辞めてしまったので、今回はもっと長く働くつもりが

つもりで終わってしまいました。

 

無職になる訳ではないので、そこまでの悲壮感はありませんが

次の職場の忙しさを知っているので、やはり不安は拭えません。

 

退勤時間の12時を待って、荷物をすべて持ち、M村さんと近くのファミレスに

足を運びました。

 

お店はガラガラというわけではないけれど、自粛宣言のせいか、待ち時間なしで

すぐ席に案内されました。

 

私はお寿司とざるそばのセット、M村さんは海鮮丼を注文。

料理が運ばれてくるまで少し時間が掛かったけれど

会社への不平不満に花が咲いていたので、待ち時間も苦になりません。

 

M村さんの話では、私の後任の人はもう結構前に採用されていて

来週の火曜日から研修が始まるとのこと。

 

ずいぶん早くから準備が整っていたというか…

完全に私を病院に行かせるのを前提で、動いていたのでしょう。

 

「いやー…良い人だったら良いんだけどさ…

また一から仕事を教えないとならないから大変だよ、やっぱり」

 

M村さんは溜息交じりに、そうこぼします。

 

こちらも病院の方は研修などでしょっちゅう行っていましたが、早朝5時半から

何をさせられるのかは、とくに教えられていないので不安しかありません。

 

しばらく会社の愚痴を言い合っていたところ、M村さんは一際大きな溜息を吐いて

 

「私ねえ、今度の人が仕事覚えたら、勤めを辞めようかと思ってるんだわ」

 

と言いました。

思わず

 

「えっ、なんで!?」

 

と聞き返すと、彼女は

 

「なんか最近何しても疲れるし、働く意欲が湧かないっていうか…

家でゆっくりしたい感じ。

もうチラシ配りもやってないしね」

 

「歳だから」と笑って言うM村さんですが、少し前まで積極的に歩いているのを

知っているので、何だか心配になりました。

 

「病院とかで一応診てもらった方がいいよ。

何かあれば大変だし、無ければ無いで安心するから」

 

そう言ってみると、M村さんはあまり気乗りしない様子で

 

「うーん…まあ、考えてみるわ」

 

と答えました。

 

その後もしばらく雑談をして、最後に、何かあったら電話でも何でも掛けると約束し

地下鉄の駅の入り口で別れました。

 

久々の外食で、表向きは気分が充実したけれど、来週からのことや

いろいろな不安も見えてきて、あまり足取りは軽くなりません。

でもこれで一つ、区切りは付いたと思います。

 

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最後まで読んで下さって、ありがとうございました

 

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