午前5時15分頃、玄関を出ます。
今のところ、この時間に人とすれ違ったことはありません。
でも車は意外と走っているもので、歩く道は暗くても
もう朝なんだなと思うのです。
今日もフェイスシールドで視界を曇らせながら、病棟の清掃を終えて休憩室に戻ると
S木さんが何かの段ボール箱を開けているところでした。
「ああ丁度良かった。
ちょっとこっちしてみて」
と差し出されたのは、フェイスシールドです。
でもそれまで私が装着していた物とは違い、顔を覆う部分の縦の長さが短くなっています。
新しいシールドを被ってみると、頭の周囲のベルトの部分がゴム紐でできていて
被りやすく、頭にフィットしました。
旧シールドは帯が薄いプラスチック製で、結束バンドのようにギザギザに合わせて
サイズを調節するタイプでしたが、すぐに緩んだり外れたりして不便だったのです。
「これ、前のよりずっといいですね」
と答えると、S木さんは
「やっぱ、そうでしょう?
病院に言ってもダメだから、うちの会社の方に掛け合って新しく買ってもらったさ」
と胸を張って答えました。
確かにこれなら作業中に上を向いても下を向いても外れないし
腕を動かしても、それほどシールドにはぶつからなさそうです。
私の旧シールドはベルトの穴の部分が何度も外れたせいで、まともに留まらなくなっていて
ガムテープを貼って無理やり使っていたので、捨てることにしました。
休憩室にある、普通の家庭にあるような筒形のゴミ箱に、旧シールドを突っ込むと
S木さんがハッとした顔で言いました。
「見えるところに捨てると病院がうるさいから、外の倉庫に捨ててきて」
建物の外のプレハブのような倉庫の中に、ゴミの回収業者が直接引き取りに来る
ゴミ捨て場があります。
チラチラ雪が舞う中、病院から支給された方のシールドをこっそり捨てて
休憩室に戻ってくる間に、ふわ~っと、目の前が白くなりました。
新しい方のフェイスシールドを装着したままだったので、暖房の効いた空気から
冷たい外気に当たって、曇ってしまったようです。
新しいシールドも、空気や熱がこもるのは避けられない様子。
それでも不便なところはかなり改善されたので、ストレスは減りそうです。
夏になった時の、暑苦しさへの不安はありますが…