そこに住んだのは22歳までの4年半ほどで、その後上京しました。
だから弟が実家を売り払った時は、「自分の実家」というよりも
「私以外の家族が長年住んでいた家が無くなった」
という感覚が強かったのを覚えています。
副業が終わった後、ふと思いつきでGoogleマップで故郷を見てみました。
実家の方ではなく、自分が小学生から高校生まで住んでいた家を。
そこは以前にも書いた、湿地に囲まれた長屋で、いろいろと因縁のあった建物です。
家族がしょっちゅう事故に遭ったり、父親が長期入院したり…
それでも自分の成長期に過ごした、本当の故郷と言える場所は実家よりもそこなのでした。
地図を見ていると、当時の記憶がするすると紐解くように蘇ってきます。
家から駅までの様子や、小学校や中学校までの道のり…
でも昔あった店が無くなっていたり、道が増えていたりして、確実に時が流れていました。
ふと、ストリートビューを見ることを思いつき、元自宅に沿った道で試してみると…
家を囲んでいた湿地は埋め立てられていて、よそのお宅が建っています。
そのまましばらく見ていくと…ありました、あの家が。
当時のままで。
いや、住んでいた当時は新築だったのですが…
とくに補修もされないまま、築45年なのが丸わかりな状態で、です。
すっかりボロ家で、横にある物置小屋もトタンが錆だらけで…
少し怖い感じするの建物に変貌していました。
でも人が住んでいる雰囲気はあるのです。
窓から台所用洗剤のようなものが見えて、自転車が置かれています。
なぜか見てはいけないものを見てしまったような気がして、すぐにブラウザを閉じました。
別に、育った家にまた住みたいと思っていたわけではありません。
でも古い記憶とともに、故郷を美化しすぎていました。
向こうに戻っても、そこは思い出の場所ではなく、似て非なるものだ。
新しい土地に行って、一からやり直すのと同じなのだ。
そんな現実を見せられたような気がしたのです。